「住宅ローンの計算をしてみる」シリーズのパート2です。
この記事では、住宅ローンの返済方法である「元利均等返済」について、計算してみます。
※ 高校数学の数列の知識を使用します。
元利均等返済など、計算前の前提知識についてはこちらをご覧下さい。
計算を始める前に
まずは必要な値を文字で置いていきます。
こんな感じで置きました。
毎月の支払い時の残金 … $x$
毎月の支払い額 … $y$
毎月の支払い額の元本返済分 … $z$
毎月の支払い額の利子分 … $w$
毎月の利子(月利) … $α$
支払い回数 … $N$
前提知識の確認 から
\begin{align}
x_1 &= X \\
x_2 &= x_1 – z_1 \\
&: \\
x_n &= x_{n-1} – z_{n-1} \tag{1}\\
\end{align}
$$y_n = z_n + w_n\tag{2}\,\,\,\,\,\,$$
$$w_n = α × x_n\tag{3}\,\,\,\,\,\,\,\,$$
元利均等返済の計算をする
元利均等返済は毎月の支払い額が一定となる返済方法でした。
この支払い方法について計算をしてみます。
毎月の支払い時の残金を求める
毎月の支払い時の残金の一般項 $x_n$ を求めてみます。
毎月の支払い額は一定なので、これを定数 $Y$ とすると$(2)$、$(3)$より
\begin{align}
Y&= z_n + w_n\\[8pt]
z_n&= Y – w_n\\[8pt]
&= Y – αx_n\tag{4}
\end{align}
(1)、(4)より
\begin{align}
x_n &= x_{n-1} – {Y – αx_{n-1}}\\[8pt]
&= (1 + α)x_{n-1} – Y
\end{align}
特性方程式を用いて
\begin{align}
x_n – \frac{Y}{α} = (1 + α)(x_{n-1} – \frac{Y}{α})\tag{5}\\
\end{align}
ここで、$x_n – \frac{Y}{α} = a_n$ とおくと
\begin{align}
a_n = (1 + α)a_{n-1}\tag{6}
\end{align}
(6)は、初項 $a_1=X-\frac{Y}{α}$、 公比 $(1+a)$ の等比数列であるので
\begin{align}
a_n &= a_1・(1+α)^{n-1}\\[8pt]
&= (X-\frac{Y}{α})(1+α)^{n-1}\tag{7}
\end{align}
(5)、(7)より
x_n = (X-\frac{Y}{α})(1+α)^{n-1}+\frac{Y}{α}\\
\end{align}
毎月の支払い時の残金を求めることができました。
利子の総額を計算する
次に利子を求めてみます。
上の計算と同様に毎月の支払い額を定数 $Y$ とすると$(2)$より
\begin{align}
w_n &= Y – z_n\tag{8}
\end{align}
$(1)$、$(8)$より
\begin{align}
w_n &= Y + x_{n+1} – x_n\tag{9}
\end{align}
さらに、$(9)$ と上で求めた毎月の支払い時の残金の一般項 $x_n$ より
\begin{align}
w_n &= Y + (X – \frac{Y}{α})(1 + α)^n + \frac{Y}{α} \\[8pt]
&\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\, – \left\{(X – \frac{Y}{α})(1 + α)^{n-1} + \frac{Y}{α}\right\}\\[8pt]
&= Y + (X – \frac{Y}{α})\left\{(1 + α)^n – (1 + α)^{n-1}\right\}\\[8pt]
&= Y + (X – \frac{Y}{α})\left\{α(1 + α)^{n-1}\right\}\\[8pt]
&= α(X – \frac{Y}{α})(1 + α)^{n-1} + Y\tag{10}
\end{align}
$(10)$は、$n$ 回目の支払い時の支払い額の利子分でした。
これを初回の支払い分から支払い回数 $N$ まで足し合わせれば、利子の総額を求めることができます。
\begin{align}
\sum_{k=1}^N w_k &= \sum_{k=1}^N \left\{ α(X-\frac{Y}{α})(1+α)^{k-1}+Y \right\}\\[8pt]
&= α(X-\frac{Y}{α})\sum_{k=1}^N (1+α)^{k-1} + NY\tag{11}
\end{align}
ここで、$\sum\limits_{k=1}^N (1+α)^{k-1}$ は、初項 $1$、公比 $(1+α)$ の等比数列の$1$から$N$までの和であるので、
\begin{align}
\sum_{k=1}^N (1+α)^{k-1} = \frac{1-(1+α)^N}{1-(1+α)}\tag{12}
\end{align}
$(11)$、$(12)$ より、
\begin{align}
\sum_{k=1}^N w_k &= α(X-\frac{Y}{α})\frac{1-(1+α)^N}{1-(1+α)} + NY\\[8pt]
&= (X-\frac{Y}{α})\left\{ (1+α)^N – 1 \right\} + NY
\end{align}
\sum_{k=1}^N w_k &= (X-\frac{Y}{α})\left\{ (1+α)^N – 1 \right\} + NY
\end{align}
ローン完済までに支払う利子の総額を求めることができました。
毎月の支払い額を計算する
支払い回数 $N$ が決まれば、毎月の支払い額 $Y$ を計算することができます。
毎月の支払い時の残金($n$ 回目の支払い時の残金)は次のようになりました。
\begin{align}
x_n = (X-\frac{Y}{α})(1+α)^{n-1}+\frac{Y}{α}\\
\end{align}
$N$ 回目で完済する場合、$N + 1$ 回目の残金は $0$ になります。
\begin{align}
x_{N+1} = (X-\frac{Y}{α})(1+α)^{N+1-1}+\frac{Y}{α} = 0\\
\end{align}
これを $Y$ について解くと
\begin{align}
(X-\frac{Y}{α})(1+α)^N+\frac{Y}{α} &= 0\\[8pt]
X-\frac{Y}{α} + \frac{Y}{α(1+α)^N} &= 0\\[8pt]
Y\left\{ \frac{1}{α} – \frac{1}{α(1+α)^N} \right\} &= X\\[8pt]
Y\frac{(1+α)^N – 1}{α(1+α)^N} &= X\\[8pt]
Y &= X\frac{α(1+α)^N}{(1+α)^N – 1}
\end{align}
Y = \frac{αX(1+α)^N}{(1+α)^N – 1}
\end{align}
毎月の支払い額を求めることができました。
おわりに
元利均等返済についていろいろ計算をしてみました。
何か誤っている点等あればご指摘いただけると幸いです。
次は「元金均等返済」について計算してみます。
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